【ヴァイキング~海の覇者たち~】紹介と感想

このところ、アマゾン・プライムでヴァイキング~海の覇者たち~を作業BGMにしておりまして。全5シーズンを観終わったので、この骨太な作品の軽い紹介と、感想用アカウントに投げ込んでいた視聴当時の呟きログを残します。

ヴァイキングがテーマのガチ海外ドラマな時点でハッピーラッキーポジティブエンターテイメントを期待する方もいないと思いますが、いとも容易く行われる暴虐の限り!生贄!略奪!流れる血潮!古い神々!キリスト教文明も負けず劣らず物騒ドロドロ!ドロドロの人間関係!みたいな感じなので、苦手な方はご注意を。

とはいえ暴力ヒャッハー!という作品では全くなく、「誰か/何かにとっての敵」は山程いても、「悪」という描き方はされません。
人物描写も多面的で、環境や状況・相手によって見せる顔が全く違ったり、成長や老化によってどんどん考え方が変わってきたり、知識を得ることによって価値観が変容したり、立ち返ったりと、同じ人物であっても人生の段階で全く印象が変わります。

見るからに潤沢なお予算を感じさせる超骨太な作品なので、もうちょっと詳しく知りたいんじゃという方は下へお進みください。

北欧神話の価値観の下に暮らすヴァイキングたち

・大前提として腕力主義
・性に奔放
・基本的人権などという概念はない
・略奪=出稼ぎ
・慈悲や残虐という概念はあるが、略奪先には適応されない
・登場人物たちの死因は98%戦死or他殺
・生贄やエグい刑罰がたくさん出てくる

厳しい環境と痩せた土。
農耕だけでは暮らして行けず、略奪は男たちの重要な仕事です。隣接する部族同士で、狭く貧しい領土を常に争い合っており、前半の主人公:ラグナル・ロズブロークの夢は、豊かな土地で農耕だけで穏やかに暮らしていけるようになること。

男たちは常に名誉欲や野心に燃え、下剋上は日常茶飯事。メイン武器は手斧。ひとたび権力を手にすれば、今度は下剋上される側。とにかく強い奴が強い。勇ましい戦士でなければそもそも男扱いしてもらえない。弱者は利用され、搾取され、死んでいく。 弱肉強食、腕力主義の時代なのです。

生存が厳しいこの時代は、神様が現代よりもずっとずっと身近にいる時代でもあります。北欧神話の神々もまた、人間に近い存在です。
戦士として死に、ヴァルハラに迎え入れられることこそ最高の栄誉。 生贄に選ばれることは非常に名誉なこと。
息子を先に亡くしても、例え身内同士で争って死んだとしても、 「ヴァルハラでまた会える」という概念があり、 男たちはヴァルハラに行けないことを何より恐れます。

このような北欧神話の宗教観・死生観は、全編通してキリスト教の宗教観・死生観と徹底的に比較されます。これがめちゃくちゃおもしろいです。 しかも「どっちが正しい」という描き方をしていないのがとてもいい。どっちにも、それぞれの生活がある。
もつれる人間ドラマが苦手な私ですが、「文化・価値観・宗教観が何もかも違う世界」を観る楽しみのほうが強かったおかげで完走できました。

とはいえ人間関係は徹頭徹尾ドロドロしてるし、イテテテテってなるシーンも、やめてー!っていうようなエグいシーンもたくさんあるので気をつけてくださいね。ただ性暴力系の描写は控えめだと思う。ないわけじゃないけど。

まとめ

・北欧神話や、宗教観の比較などに興味がある人はきっと好き
・ヴィンランド・サガとか好きな人は入りやすい
・スカイリムが好きな人たちはきっと戦化粧や装束・武器に大興奮
・でもエグいし人間関係はドロドロしてるから気をつけて

こんなかんじです!
以下は感想投げ用アカウントに投げ込んでいた呟きの記録です。

Twitterの感想ログまとめ

作業BGMにしていたので、実況というよりもあくまで所感です。固有名詞はほとんど挙げていないので見た事ある方にしか伝わらないとは思うのですが、ネタバレはしています。
「そのうち見たいけどネタバレは見たくない」という方は、視聴後にまたいらしてくださいね。

シーズン1

首長の美しい奥方が、誓いを立てた小さな戦士にキスを与えて儀式終了、っていうのロマンを感じる…でもこれ、誰もが羨ましがる美しい奥方じゃないと絵面が完成しないのでは

※一番最初の呟きが身も蓋もなかった。

略奪を前提として生計を立てる公式略奪者、ほんとにめちゃくちゃ怖いな。襲われる方はたまったもんじゃないなこれ

待って 狭い船で過酷な船旅の果てにようやく陸地にたどり着き、身も心も飢えたヴァイキングVS抵抗手段を持たない修道士ってエグすぎない?

※エグかった。ちなみにこのシリーズではないのですが、別映画は老修道士が性的暴行されるシーンがあります。おすすめはしないので名前は伏せます。

バッドランド~最強の戦士~でも、非暴力を貫いて森の中で暮らしている少規模な宗教団体が、たった二人のならず者相手に好き放題されようとして(花嫁が連れ去られようとしてるのに、誰も抵抗しない)、剣で立ち向かう新参者の奥方にも加勢しない…っていうシーンがあって。

それを見た時、ああいくら「暴力はよくない」と言って平和に暮らそうとしても、相手が尊重してくれる世界でなければ好き勝手に蹂躙されるだけなんだ、と思ったんですよね。抵抗手段をもたないと自由を保てない。私はどうしても「敵は二人だろ! 数は圧倒的にこっちが多いのになんで抵抗しないの! 囲め! 長モノ持って囲って殺せ!」って思っちゃったんだよなあ…

いとも簡単に蹂躙と皆殺しが…

※はじめての略奪に恐れおののく鳥子

宗教が違うからヴァイキングには十字架の意味もわからないし、修道士たちがどういう存在かもしらない。名状しがたい未知の存在によって蹂躙される人間の縮図がこんなところに…

※ 略奪は皆殺し・村は焼く・捕らえた捕虜たちは奴隷化が基本コース。

相思相愛ヴァイキング夫婦(妻も女傑)、二人してめっちゃめちゃ嬉しそうに奴隷にして連れて帰ってきた修道士を3Pに誘う


「まず自衛できないとマジでどうにもならない。弱いものは簡単に侵略される。強い兵力を持ってることがいかに強いか」みたいなことを思い知らされる

このへんからシーズン2

ヴァイキングをずっと流しています。略奪者めっちゃ怖い
主人公のラグナルは知的でやや頭が柔らかく、知らないものへの好奇心が強いんだけど、根本的に蛮族なので残虐を残虐という認識もなく、さらに吹き替えの声優さんの声がほがらかで優しいせいで、余計に怖い。

かつて~の英雄~赤のラグナル~♪

やばい反面、幼い娘・息子に対してものすごく愛情深いという点は一貫している。基本的に身内への情は厚いんだよな…

ラグナルの妻・ラゲルサがまた強くていいキャラだ…女戦士…

作品中女戦士は多数登場して、「運命はいつも勇敢な女性に微笑む」なんて占い師から言われるぐらいなのに、戦えない女の立場は弱く、奴隷の女は所有物であり、好きにレイプしていいとかそういうのも当たり前にあって、「誰しもに与えられる基本的人権」というものがまず存在しない世界よ…

それでありながら、奴隷身分の女性でも戦う訓練をつけてもらえることができ、奴隷身分から開放された暁には訓練を積み、試練に合格すればヴァイキングとして船に乗り込むこともできる…っていう この独特の文化よ

※奴隷は所有者の所有物ですが、首長の許可があれば「今日から一般人」みたいなケースも発生します。

特殊技能持ちはやっぱり有利だな…船大工しかり、医術しかり。ヘルガとフロキ、変わり者とそのよき理解者のカップル、可愛くて好き。

貞操観念がそもそもない北欧神話圏、 女性ですらも「子を産むため、そして楽しむための体よ」と言える奔放さ。ただ別に宗教でのタブーじゃなくても愛する相手の心を自分だけにとどめておきたいと思う男女は当然多数存在する。

キリスト教の倫理観がないので「婚前交渉で妊娠」が特にタブー視されてなく、妊娠してから「結婚するか」みたいなケースも、子供ができても特に結婚はしていないケースも、ぽこぽこ見受けられるなあ…

※結婚自体は祝福されるべき慶事。

「死んだあとヴァルハラへ行く」ことが最高の名誉なので、死にきれなかった老兵が「自分は招かれないのか」と嘆き、死に場所を求めて戦場に戻ったりする。

「装身具の贈り物などは贅沢品であるがゆえに、男が女へ贈る場合は強い求愛の意味を持ち、同時に女心を強くときめかせるアイテムである」みたい風潮も今よりすごく強い…

このへんからシーズン3

ラグナルが老いてきました。えーーーこれどうなってるの!?

ヴァイキング、多分そろそろ作中で10数年は経過してて、女性陣は全然年取らないんだけど主人公のラグナルはわかりやすく老いてはげていくな~…と思ったんだけど、シーズン進んでも若い頃の子供たちがほぼそのままで出てきたり、息子のビヨルンが若い頃のラグナルそっくりで出てきて えーーこんな顔だったっけ!?

※全5シーズン。現実の経過時間は多分3年ちょいくらいで、さらにラグナル役の方は2019年時点で御年39歳なので、老いは特殊メイクなことが判明。 女性キャラは若いままなのでちょっと混乱します。

ヴァイキングたちは、平生は彼らの信仰に基づいて、血生臭く時に理不尽で腕力主義ではあっても、それなりに秩序だった暮らしをしている。
それが対敵・略奪となるとわかりやすく野蛮さが出てくるんだけど、かといってキリスト教徒がお綺麗かというと全くそんなことはなく、結果的にいつも犠牲になるのは慎ましく暮らしている無辜の民である…みたいな結論に至りますね…

生まれついての足弱で、父に敬遠され、母に溺愛され、周囲に嗤われ憐れまれ、結果性格がネジ曲がって攻撃的で乱暴で、怒り散らす面が強く出ていた息子の一人、蛇目のアイバー。父が戻ると、父への憧れや認められたいという願望が他の息子たちより前面に出てくる。

そしてひとたび父と共に行動を始めれば、それまでの嫌なかんじが急激に弱まって、素直で努力して、嬉しそうに笑う一面を見せ始める…っていう描写嫌いじゃない。

いや結局性根自体は邪悪なのかもしれないんだけど、弱いものは死ぬしかない厳しい世界で障害を持って生まれ、2本の長い足は邪魔な重りでしかなく、這いずることでしか動けない状態で育った人の鬱屈や怒り、損なわれ続けた自尊心…などの描写をガチでやったあとのこの展開、「環境次第で違った一面が光り始める」っていう示唆ならものすごくいいな…

【視聴後の追記】
父との旅は、アイバーの尊厳を取り戻す旅になるのか…という期待は叶わず、父は戦争の種を植え付けて(最後の最後まで何か企んでるんじゃないかと!思ってたのにー!)彼を置いて死に、彼は元の鬱屈せざるを得ない環境に戻って兄弟たちと過ごし、争いあい、再び怒りを溜め、やがて爆発させ…という道を辿っていきます。
好きなキャラでは、決してない。でも彼の怒りの根底は『子供の頃から損なわれ続けた自尊心』『どうしたって人と違うことへのコンプレックス』であり、どうしてそういう風に歪んでいくのかもよく理解できる丁寧な描写、そして役者の熱演は素晴らしいと思います。

ラグナルの死について

最初は奴隷として連れ帰った宣教師と懇意になり、唯一の友と呼ぶほどに親愛を寄せ、途中演技とはいえ洗礼を受け、キリスト教を多少なり知った上で自分の宗教においても客観的に眺めることができ、「俺は神を信じていない。仲間には必要だが」と言ったラグナルが、異国の地でひとり処刑される最期のシーンで「トールが迎えにくる、ヴァルハラへの門は開かれる」とまさにヴァイキングを象徴するような豪胆・豪傑さで言ってのけたあれはどういう心理だったのかなあ…

怖くて宗教にすがるという感じではなかった。再三の「悔い改めよ」という言葉に対して、「ひとつの悔いもなくヴァルハラへ行く」って言い切る。最期の最期に、自分の根幹を成した価値観に立ち返った、みたいな感じなのかな…
他の宗教を知り、北欧の神々を小さな頃のように信じられなくなってはいても、かといって彼はキリスト教徒ではない。彼を処刑し、彼を囲んで眺める異国のキリスト教徒たちに、俺はヴァイキングだと、お前たちの神の管理下にはないと言い放つような…玉葱の皮をむいてむいてむいたその芯の部分にまで戻ってみれば、ヴァイキングとしての魂があった…みたいな印象を受けたんだけどあれ公式ではどういう意図だったんだろうか

色々あっても、内心はどうでも、結局彼は偉大なるヴァイキングで、良くも悪くも人をひきつけて、死んでからのほうが息子にも元妻にも愛されていて。
「ヴァルハラを楽しんで。あなたにはその資格がある」「取り憑いてもいいからずっと側にいて」とか言われちゃってさ。でもしっかり息子に争いのための火をともして死んでいくあたりやっぱり価値観が違う。死してなお影響力は強く、そして息子たちには幸せに暮らしてほしいなんて価値観もない…

「でも幸せにはなれた」
「幸せなんて無意味だ」


物語は終盤へ

すごい…登場人物は大体戦死か他殺なヴァイキング、病死とはいえ唯一ベッドの上で息子たちに泣いてもらいながら死ねたのが、怒り、悩み、葛藤しつつも最終的に奥方の不義による息子のことも愛して、ちゃんと死の床でも「息子よ」と呼びかけて手を握ってみせた人、っていうのが…
ここへきてベッドで惜しまれながらお別れを言えるシーンがくるとは…

いわゆる「畳の上で死ねた」唯一の男

ていうかここにくるまでそんなシーンがなかったことに驚きだよ

宗教と多面性、時の流れによる変容をものすごく時間かけて描いてる作品だなあ…人の善悪は環境と対象によって簡単に変化するので、どんなに嫌な奴でも相手によっては不意の贈り物のような善性を見せたりする。そして完全に善をつらぬく人もまた存在しない…徹底している…

女王の愛人の女戦士だったのに敵方に攫われ求婚され、最初は拒むけど覚悟決めて王妃になって、ゆうても別に野望があるわけでもなく故郷のことも女王のことも忘れられなくて、危ない橋渡って危機を知らせたりもして、でも結婚してからは一途にめちゃ大事にしてくれる夫のことを憎みきれなくなって…っていう、書き出しただけで波乱万丈かつ大変な目にあう女戦士がいるんですが、この人の決着の付け方がすごくよかった。

いっそ無邪気に自分を信じ切って愛してくる夫(攫ったのこいつだけど)(なし崩しで生まれた愛)をそれ以上傷つけることなく、且つ愛する女王も傷つけず、秘密を抱えたまま逝った…
まあ夫にこのあと死の知らせはいく&女王の手にかかったわけで、それ自体はトラウマになりそうな行為ではあるんだけど、引き裂かれた心が、それぞれの想い人に対して「彼女は私(俺)を裏切ってない」という安堵を与えて死んだ、っていう そういう

※すごくよかったシーン①

「誰もが君の死を悲しんだ。石も悲しんだ。木も悲しんだ。金属も悲しんだ…」って言いながら、遺体に石や木や装身具を添えて埋葬するの、すごくいい
でもすごく掘り方浅い。掘り方が浅い…

あの浅さだと出てきちゃうのでは…

※ すごくよかったシーン②。埋葬の穴の掘りの浅さを気にしている。

第一シーズンからいる船大工フロキ。彼もまた人生の段階で印象を変えていく登場人物なのですが、偏執的なまでに信じていた神々への思いが続く不幸と望まぬ展開にゆらぎ、「心に支えがほしい」と思っていた際のアラビア圏への初略奪で、アッラーに祈るムスリムの人々を初めて目にして圧倒され、思わず「礼拝所にいる人たちは殺すな」と止めてしまうあの一連、すごくよかった…

キリスト教徒を、いっそ嬉々として殺し、どんどん略奪してきた彼が、「初めて目にする、言葉が通じない、何も知らない文化で暮らす人々が一心に捧げる祈りの形」に対してある種心動かされる、って描写、すごくいい。知らないものへの畏れであり、その時信じる心がゆるぎかけていた彼は少し圧倒され、少し憧れたのではないか。みたいなやつ…

すべてを失い、人生に疲れ、神様に運命を任せて一人大海原を旅立ち、人のいない島にたどり着いた老ヴァイキングが、逆さに登る滝や、口から大量の蟲を吐き出す女の幻影など、数々の神秘を観るその絵が最っっっ高。このドラマは神々がまだ我々と近い時代を描いているので、北欧神話サイドもキリスト教サイドも、時折神秘体験が当然のように出てきます。最高に好き…

ここは神の地だと信じ、孤独でも心満たされ毎日笑っている生活の中で、「こんな幸せは分かち合わねばなるまい」と故郷に戻り、人々を先導して連れて戻ったけど、案の定そこからひたすら小さな地獄が展開されるの本当に見てて辛い…

ただ独りで満たされていればよかったんや…と思いながらも、強い宗教体験をした宗教者は、その多幸感に「こんな幸せな気持ちを独り占めしてはおれない、分け与えるべきだ」って使命を感じて著を残したくなるものらしいので、なかなかむずかしい

ただ、一枚岩ではない小さな群れが、なにもない新天地で、厳しい環境の中穏やかに暮らしていくためには宗教だけでは駄目で、指導者とか統治者とか、法の概念とかがないと厳しい…みたいな
そういう縮図を…見ています…

5シーズン全部終了。最終章あたりは確定申告作業がクライマックスだったため呟き少なめとなっております。オチはどうぞ実際にご覧ください。

余談

視聴途中、わくわく映画友の会メンバーで『高慢と偏見とゾンビ』を同時視聴したんですが、腕力主義のヴァイキングたちは求愛を断られると態度を豹変させて暴力的になる男たちが結構いるので、求婚を断っても潔く引くダーシーさんにかなり好感を覚えました。

Mさん:「ヴァイキングと比較するものではないよ!」

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